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のぞみ会は変形性股関節症の患者会です。

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〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-33-13 千年ビル607号室

変形性股関節症について

    変形性股関節症とは
    治療法                              
    

<変形性股関節症とは>

病気の内容

 変形性股関節症は先天性・後天性の疾病や外傷によって関節の構造に破綻を来した状態をいいます。非炎症性で進行性の病気です。その過程において関節軟骨に変性・破綻が起こり更にそれを修復する反応が同時に起きている状態すなわち、すり減ったり過剰な骨ができたりしてすり合わせに不具合が生じて関節が変形していく病気です。
 症状は、痛み、関節の動きの制限、跛行です。発症すると、加齢とともに徐々に悪化し、しかも、いったん変形した股関節を発症以前の状態に戻すことはできません。より良い治療効果を得るためには、痛みがなくても定期的に専門医に受診をして経過を観察しながら、適切な時期に適切な手術を受けることも大切です。

発症の原因

 変形性股関節症の原因は、大きく次の2つに分類されます。

一次性
 明らかな原因がなくて関節がこわれてくるもの。これは関節軟骨の細胞が老齢化して、しっかりと働かなくなったためと考えられています。欧米では、この1次性が大半を占めます。

二次性

 何らかの病気やケガが原因でおこってきます。日本では、この二次性が大半を占め、先天性股関節脱臼臼蓋形成不全によるものが約90%、圧倒的に女性に多いという特徴があります。ほかにペルテス病、特発性大腿骨頭壊死症、関節唇損傷などがあります。
最近は高齢化が進み、特に明らかな原因となる病気に罹ったことがなくても年齢とともに股関節症を発症してくることがあります。


先天性股関節脱臼とは

 原因は解明されていませんが、生まれつき股関節が脱臼している、子宮内での異常姿勢、遺伝的素因(家族性)などが考えられています。最近は、発生率が減少しています。

臼蓋形成不全とは
 臼蓋(股関節の屋根の部分)の不完全な発育により大腿骨頭への被りが浅い状態で、先天性股関節脱臼に起因するものと、成長期に臼蓋の発育が正常に進まない後天的なものとがあります。中年以降に痛みが出て、はじめて臼蓋形成不全と診断される場合もあります。

股関節の構造

 太ももの付け根にある股関節は、骨盤の一部である寛骨臼(かんこつきゅう)の臼蓋(きゅうがい)という受け皿に丸い大腿骨頭がすっぽり収まる構造をしています。臼蓋と大腿骨頭の表面は、それぞれ2-3ミリの軟骨に覆われていてツルツルです。その周りは、関節包という袋に包まれていて、中にはごく少量の関節液が入っています。関節液は関節軟骨に栄養を与え、運動に際しては潤滑油として作用します。本来、正常な股関節はこのような構造で、曲げたり伸ばしたり開いたり閉じたり回したりなどの動きをスムーズに行うことができます(図1)。

   

            図1

変形性股関節症とは

 こうした股関節において、先天性や後天性の疾病や外傷によって関節軟骨の破壊や変性が生じた状態を変形性股関節症といいます。破壊された軟骨は修復されることはほとんどなく次第に軟骨下の骨にも影響が及ぶようになります。骨が障害されると、修復反応として過剰な骨が形成され、本来丸い形をしていた骨頭がいびつに変形し関節症が進行します。このため、痛み・跛行・関節の動きの制限といった症状が出てくるわけです。日本人における変形性股関節症は先天性股関節脱臼の治療後や、発育期に生じる臼蓋の発育不全、すなわち先天性の臼蓋形成不全に由来するものが多く、全体の90%を占めています。寛骨臼の発育が不十分で骨頭を十分に覆うことができないため、一部の軟骨に負担が生じ、傷みやすくなるというわけです。先天性股関節脱臼も臼蓋形成不全も圧倒的に女性に多いため、変形性股関節症は女性に多くみられます。

変形性股関節症のレントゲン像

 診断にはレントゲン撮影が不可欠ですので、その見方を知っておくことは病気の理解を深める為にも重要です。正常股関節のレントゲン像では、股関節の屋根(臼蓋)と丸い骨頭の表面を覆っている軟骨はレントゲンにうつりませんので、隙間があいて見えます。隙間が十分にあれば軟骨は正常に存在していると考えられます。また、正常の場合、骨頭は寛骨臼によく覆われています(図2)。
      

               図2

 ところが、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全の既往がある場合、臼蓋荷重面が傾斜し骨頭の位置が正常より外側に位置して見えます。さらに、骨頭もまん丸ではなく扁平した形をしていることもあります(図3)。

   

               図3

 変形性股関節症が始まりますと、臼蓋の骨頭の体重のかかる部分が白く写る骨硬化像などの変化が生じます。この状態を前期股関節症といいます。さらに進むと、関節の隙間が狭くなり、この状態を初期股関節症といいます。臼蓋や骨頭の骨硬化部に穴が空いてくる骨嚢包形成、関節の隙間がさらに狭くなる関節裂隙狭小化臼蓋や骨頭に過剰な骨ができてくる骨棘形成といった変化がみられるのが進行期股関節症です。そして 関節の隙間が全体に消失し、体重のかかる部分の骨はすり減って骨硬化や骨棘形成も非常に顕著になり、全体に関節が変形してしまった状態を末期股関節症といいます(図4)。

  
                 図4


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<治療法>

 体にメスを加えない保存的治療と手術療法があります。通常は、まず保存的治療を行うことから始めます。

保存的治療 
ー 日常生活の見直しや環境を整える ー

 股関節や下肢への負担になる原因をなるべく取り除くことが先決です。例えば、日頃、重いものを持って階段の上り下りを頻回に行わなければならないとか、長歩きをしなければならない生活環境や職場環境などがある場合、その環境を変えることを考えるべきです。極端な話、仕事を辞めたら股関節の痛みが楽になったという話はよくあります。もちろん簡単に仕事や家事などをやめるわけにはいきませんので、負担を少しでも軽くする工夫が必要です。それには、家族や周りの人、そして職場の人の理解と協力が必要です。

ー 体重コントロール ー

  片足で立った状態だけでも股関節には体重のおよそ3倍の重みがかかります。これは股関節を支えるために体重に加えて、さらに体重のおよそ2倍の筋力が加わるためです。体重は股関節に負担を与える大きな要因となりますのでコントロールすることは重要です。

ー 杖の使用 ー

  股関節への負荷を軽減するうえで有効です。しかしながら、なかなか杖を持つことに抵抗のある方もいらっしゃいます。また雨で傘を持たなければならない場合は手がふさがってしまうとか、杖のつき方によっては足がひっかかって危険な場合もあります。杖の使用はもちろん必須ではありませんが、使用する場合は自己流ではなく専門の医療機関で正しい杖の使用方法を教えてもらったほうがいいと思われます。

ー 筋力強化および関節可動域訓練 ー

  股関節の不具合があるとよく跛行がみられますが、この原因は脚の長さに差があることと同時に、臀部の筋力が弱いために生じます。片足で立つとき、正常な状態ですと反対側の骨盤が上がりますが、臀部の筋力が弱いと逆に反対側の骨盤が下がる現象がみられます。この状態で歩くと、体が左右に揺れるような歩き方となります。股関節に痛みがあるとどうしても動かしたくないということで股関節の周りの筋力が弱ってしまいます。動かさないとさらに関節可動域が狭くなり、筋力もより低下してしまいます。このままでは悪循環ですので、可能な範囲内での関節のストレッチと同時に筋力強化を心がけることが重要です。

ー 痛み止めの服用 ー

  痛み止めの多くは非ステロイド性消炎鎮痛剤ですが、これは痛みを軽減させるとともに炎症を鎮める作用があります。股関節症で痛みが強くなったときには、関節が腫れて水がたまり関節炎が生じていることもあります。このような場合、この痛み止めを使用することで炎症も抑えますので有効です。しかし長期間にわたって漫然と服用し続けることは、内臓にも悪い影響を及ぼすためお勧めできません。一般論として、処方された薬をきちんと飲むことはもちろん大切なことですが、この痛み止めに限っていえば、痛みの程度に応じて服用を自己調節してもいいと思います。

手術的治療 

手術の方法としては自分の関節を温存して行う骨切り術と、人工関節に換える手術に分かれます。代表的な骨切り術には、大腿骨の内反骨切り術、外反骨切り術、骨盤骨切り術(寛骨臼回転骨切り術・キアリー骨盤骨切り術)がありますが、以前と比べますと大腿骨の骨切り術はかなり少なくなっています。一方、最近注目されている方法として股関節鏡を用いた手術手技も幅広く応用されてきており、その他従来の臼蓋形成術(棚形成)や筋解離術なども行われております。

ー 内反・外反骨切り術 ー 

 大腿骨転子部というところでクサビ型の骨を切り取って骨頭を内側へ倒すのを内反骨切り術(図5)といいます。股関節形成不全において大腿骨骨頭を内側へ倒すことで、より骨頭が体の中心に向かい関節として収まりをよくすることを目的とします。この方法は、後に述べる骨盤骨切り術によって臼蓋を形成することが可能になってからはあまり行われなくなりました。軟骨が傷んでからでは効果がないため、初期から進行期までが適応です。

    

               図5

 一方外側へ倒すのを外反骨切り術(図6)といいます。この方法が適応となるのは、すでに変形が進行したために、大腿骨頭が変形して扁平化し骨頭の頂上の軟骨が消失している状態です。外反骨切り術を行うと扁平化した骨頭の内側が臼蓋の内側を持ちあげるため骨頭の頂上には、臼蓋との間に隙間ができます。つまり荷重部の移動が行われると考えられます。どちらの骨切り術においても人工的に骨を切り離すので特殊な金属のプレートや螺子を使って骨接合をします。そのため術後の後療法も長く、手術した足に全荷重できるのが術後2 ヶ月から3 ヶ月もかかります。また、プレートや螺子はこのまま体の中においていても問題ありませんが、骨切り部が十分に癒合してからとりだすためには再手術を要します。これらの骨切り術は、後に述べる人工股関節手術の成績が安定してきたため、ほとんど限られた症例にしか行われなくなりました。

     
      
                図6

ー 寛骨臼移動術(寛骨臼回転骨切り術) ー 

 骨盤骨切り術にはいくつかの方法がありますが、ここでは、寛骨臼移動術について説明します。これは、骨盤からはみ出した骨頭を骨盤の屋根の部分すなわち寛骨臼で覆う手術です。主に、股関節の外側から行う方法と骨盤の内側から行う方法とがあります。近年、骨盤内側から骨切り術を行う方法が、傷も小さく股関節の外転筋群への侵襲が少ないということで注目されていますが、技術的にはかなり困難さを伴います。一方、股関節の外から骨切り術を行う方法では、大転子を切離して行う方法と切り離さず行う方法があります。手術は大転子を切り離す方法のほうが行われやすいですが、大転子部再接合後の癒合不全の可能性があります。いずれの方法にせよ骨頭と臼蓋との適合性をよくし、荷重部の応力を分散、関節軟骨の負担を軽減し長持ちさせることが目的です(図7)。手術時期としては、関節症が進行する前に行うべきでところですが、初期の股関節症では痛みも少なく生活には支障がない状態で、しかもこの手術のための入院期間や療養期間は3ヶ月から6ヶ月ぐらいは考えなければならないので、なかなか踏み切れずに機会を逸してしまう場合もあります。条件が揃えば、それこそ一生、自分の股関節で過ごせる可能性が広がるため有効な手術方法と思います。

     

                図7

ー 人工股関節 ー

 人工関節には、特殊な合成樹脂である骨セメントを使って骨にくっつけるものと、人工関節そのものの表面が細かく凸凹に加工されているために接触した骨によく密着し固定が得られ、骨セメントを必要としないものとがあります。どちらも臼蓋という受け皿に設置するカップと大腿骨骨髄内に挿入し骨頭を支えるためのステム、そしてステムの上に装着される骨頭により構成されています(図8)。重要なことはこうしたステムとカップが骨と緩みなく固定し一体化することですが、通常の骨質であればセメント式も非セメント式もほとんど同様の固定性が得られるようです。ただし、骨粗鬆症の進んだ骨に対してはセメント式がより選択される傾向があります。ステムに設置された骨頭が受け皿となるカップのなかで動くため関節としての機能が可能となりますが、金属の骨頭に対して受け皿がポリエチレンの組み合わせがスタンダードとなっております。近年セラミックの材質がよくなり、セラミック骨頭とポリエチレンの組み合わせや、セラミック対セラミックが使用されています。
 また、今までの高分子ポリエチレンよりも磨耗しないポリエチレンの開発により、クロスリンクポリエチレンができました。これで人工関節の耐久性が長くなることが期待できます。
 人工股関節置換術を最近では正確な人工関節の設置を行うためナビゲーションを利用するとか、筋肉へのダメージを極力最小限にするMIS(最小侵襲手術)などで行うなど手術の技術や精度が向上しております。また、以前に比べて格段に入院期間も短くなっており、海外では日帰り手術も行われるようになっております。今や多くの病院において人工股関節が施行されており、病院によりそれぞれの特徴があります。詳細については担当医や主治医の説明をよく聞くことが大切です。

       

              図8

人工股関節再置換術

 人工股関節の再置換を行わなければならないのは、人工股関節とそれを支えている大腿骨や臼蓋骨との結合が破綻してグラグラになるとか、骨頭の受け皿になるポリエチレンが極度に磨耗するとその取り替えが必要となります。ごくまれに、どこからか人の体に入り込んだバイ菌が、人工股関節にくっついた結果、周囲に膿がたまったり、人工股関節が緩んだりすることがあります。こうした場合にも人工股関節を抜去して綺麗にバイ菌を取り除いてから再置換術を行います。また、転んだり事故に遭うなどの外傷により人工関節周囲の骨が折れたり、人工関節が外れた場合も再置換術が必要となります。人工股関節再置換術の方法は、すべてを取り替えてしまう場合とその一部を取り換えるだけでいい場合があります。もちろん全部を取り換える手術は出血も多くなるでしょうし、大変ですのでできるだけ避けたいものです。バイ菌が入り込んだ場合や外傷の場合は別にして、人工関節と骨の変化については定期的なレントゲン検査によりわかります。万一、再置換術が必要となるような状況があったとしても、早く対応することによって最小限の方法で済む場合があり、定期的なレントゲン検査は必要と思います。人工股関節手術を受けたら、一生の付き合いで大事にしたいものです。末長く快適に過ごすためにも定期検診を欠かさないようにしましょう。


*関節温存手術や人工股関節置換術は、施設によってリハビリ、入院期間などが異なりますので、手術を受ける病院で、適切な説明をしてもらいましょう。

              (以上は、新旧の「のぞみ会ハンドブック」を参照しました。)