上手な病院(医師)の選び方
股関節症は進行性の病気です。一時的に痛みがおさまっても治ったわけではなく、加齢と共に重くなってくるのが普通です。手遅れにならないように治療計画をたてたり手術後のトラブルの早期発見のためにも専門医による定期的経過観察が必要です。
そのためには信頼できる主治医をもつことが大切ですが今自分にとって信頼できる医師や病院を探すことは、なかなか容易ではありません。それは専門医のいる病院の情報が一般に公開されていないことや、「信頼できる医師」のイメージには個人差が大きいなどによります。
病院選びの場合、まず専門医のいる病院の情報を手に入れて、実際に受診してみて、自分にあった医師かどうか判断してください。病院選びは、他人に探してもらうのではなく、あなた自身が積極的にかかわって、自分で探すことが必要です。受診に先だって医師の説明が理解できる程度の病気の基礎知識について、勉強しておきましょう。
病院(医師)選びのポイント
- 股関節の手術をてがけている整形外科医で、できれば股関節外科の専門医が望ましいと思います。
- つぎに病状や治療方針について、よく説明してくれて患者の立場を理解してくれるかどうかが目安になります。また遠慮せずに自分の意思が伝えられることは医師との信頼関係を築くもとになります。
- 短い受診時間の中で、医師の考えや人柄を知ることは難しいことです。こんな時、患者同士の「口コミ」情報は役に立ちます。
- 「のぞみ会」主催の医療講演会・電話医療相談等は医師の考えや人柄にじかに触れられるよい機会です。また会報の病院訪問記や体験記を、情報源として活用していただくとよいと思います。
上手な診断の受け方
股関節症の場合、受診のきっかけは、なんとか股関節の痛みを治したいというものがもっとも多いと思います。腰痛や腿、膝の痛みも調べて見ると股関節の変形が原因ということがよくあります。
- 受診の際、病状を説明し、医師に正しく理解してもらうことが大切です。痛み始めた年齢、どの部分がどんな時に、どんなふうに痛むのか、痛みの程度や持続時間など、あらかじめ調べてメモしておくと便利です。また今まで受けた治療を思い出して整理しておきましょう。
- 診察や検査の後に、医師から痛みの原因や病気の進行状態、治療法などの説明があると思います。聞き慣れないコトバで話されることも多いと思いますが、分からないまま聞き流さないで、分からないことは確認してメモをとっておいて、後で調べましょう。
- 手術を勧められた場合、混乱して説明を聞く余裕もなくなるのが普通です。気を取り直して、手術の方法、する場合のメリット、デメリット、社会復帰までの期間、手術をしなかった場合どのようになるのかを納得できるように説明してもらいましょう。家族に病気を理解してもらうために、同席してもらうこともよいと思います。手術をするかどうかはその場で結論を出さないで検討する時間を持ちましょう。
- 股関節症の手術は、決して簡単なものではなく、その後の生活にいろいろな影響があります。納得がいくまで情報を集めて、判断することが大切です。その場合、ほかの医師の意見を聞いたり、同じ手術を体験した人から話しを聞くことが役に立ちます。
- 手術は信頼できる医療機関で受ける事が大切です。医師との間で、十分な信頼関係ができた上で、実際に手術を受けるかどうかを決めるのは、あなた自身です。
- 手術をせずに経過観察を勧められた場合は、医師の指導に従って定期的に診察を受けて、自己管理に努めましょう。40代以下の方は関節温存手術が出来るかを確認してみることも一案です。
- 服薬を勧められた場合、アレルギーの有無や現在服薬中の薬などについて、報告しましょう。その薬の名前、服用する目的、服用する期間、症状がなくなったときは中止してよいか、予想される副作用などについて説明してもらいましょう。
- レントゲン写真を撮った時、写真のコピーを作ってもらい手元に保管しておくことをお勧めします。病気の経過を調べたり他の病院に受診する時、役に立ちます(コピーは健康保険扱いになりません)。
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手術を受けると決めたら、それなりの準備が必要になります。会員の経験を元に最近の情報をまとめました。
手術・入院する病院を選ぶ目安
股関節症の手術を受ける場合、一般的に入院期間が「関節温存手術」では6週間〜8週間、「人工関節置換術」では2週間〜3週間です。「人工関節置換術」は、施設によっては入院が1週間位のところもあります。単に入院期間の長短にとらわれず、ご自分の症状及びライフスタイルを考えて決めましょう。術後のリハビリは他の施設での転院を勧められるところもあります。
また、入院中に家族が通いやすいか、術後の通院のために駅にエレベーターやエスカレーターがあるか等事前に調べておくことも大切です。
手術・入院に際してのポイント
1. 股関節症の手術は一般的には専門医を中心にチームを組んで行われているようです。ご自分が入院する病院はどうか医師に聞いてみましょう。また、自分が受ける手術について心配なことは、きちんと確認しておきましょう。
2. 「人工股関節術後にリハビリは特に必要ない」と言われる場合もあるようですが、罹患期間が長かったり、足の筋肉の状態によってリハビリが重要な場合があります。術後に再びスポーツをしたい、海外旅行をしたい、続けて30分くらいは歩けるようになりたいなどの目標を持って医師とよく相談しましょう。また、リハビリのために他の施設に移る場合は、どのタイミングで移るのかなど確認しておきましょう。
3. 手術前に自己血貯血しておくことが一般的です(400ml〜800ml)。ただし、最近は貯血を行わない病院もあるようなので確認しましょう。また、採血中に造血剤の投与が必要になる場合もありますので事前に説明を受けましょう。
[手術を受けると決めたら、もう一度以下の点をチェックしてみましょう]
- 主治医に信頼と親近感を持てましたか?
- 看護師の対応はどうでしたか?
- 通いやすい施設ですか?
- 設備はしっかりしていますか?
(個室/共同部屋、ベッド、風呂・シャワー、テレビ、冷蔵庫、荷物保管場所など)
手術前の準備
入院のための説明書を渡されますが、病院の形式、本人の症状や手術の方法により必要な物が異なるかもしれないので、あらかじめ看護師に確認しておくとよいでしょう
- 手術時に必要な物 ・・・ 大抵は病院から指示があります。
- 手術後に必要な物
関節温存手術では術後から離床までの期間が長いので、ベッド上での食事や排せつが出来るような準備が必要になります。不明な点は病棟の看護師に聞きましょう。なお、人工関節手術でも1〜2日はベッド上の生活が一般的ですので、用意しておいた方がよいものを記します。
例: 洗面・洗髪用具、フェイスタオル、バスタオル、ストロー、S字フック、
マジックハンド、消臭スプレー、手鏡、ティッシュペーパー、
着替え用パジャマ、下着類など
<入院費用・その他>
費用
手術を受けるとなると、入院や検査などにかかる費用が心配です。費用は、入院日数・病院(私立か公立かなど)によって異なります。
費用の主な項目は、手術料・投薬料・麻酔料・検査料・リハビリテーション料・食事療養費・その他備品代などです。
◎高額療養費制度を利用することが出来ます。
社会保険、国民健康保険など、加入健康保険の各窓口で健康保険限度額 適用認定証の交付を受けて医療機関へ提出します。これにより、窓口負担を一定額(自己負担限度額)支払うことが出来ます。手術を受ける月の月末までに手続きを済ませてください。遅れた場合は、一時的に医療費を立て替えなければならないことがありますが、高額療養費制度により後日還付されますので、最終の自己負担額に違いはありません。
費用が高額になるために、支払いについては、入院される病院の医療ソーシャルワーカーや加入健康保険の窓口に相談してみるのも良いでしょう。
更生医療・介護保険
身体障害者手帳を持っていると更生医療を利用できる場合があります。手術前の手続きが必要です。詳細は、各市町村の障害担当窓口か病院にご相談ください。退院してからの家事が心配な方は、入院前に福祉事務所に介護保険の利用について相談しましょう。詳細は、当ホームページの「公的サービス」の「介護保険」にも掲載しています。
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医療管理について
定期的な経過観察が大切です。変わったことがあった時は診察を受けましょう。
股関節周辺の筋力や動きを保つために
自分にあった運動(自転車・水泳・ホームエクササイズ等)を休まず続けましょう。ただし過激な運動(マラソン・サッカー・バスケット・ジョギング・登山・テニス・スキー等)は、お勧めできません。しかし、最近は人工股関節置換術後に登山・テニス・ゴルフ等は禁止と言われなくなりました。
股関節に無理な負担をかけないために
- 体重をコントロールして、太りすぎないように気をつけましょう。
- 重い荷物は手に提げずに、ショッピングカーや自転車、自家用車で運びましょう。
- 高いところから飛び下りたり、転んだりしないように気をつけましょう。
- 頻繁に階段を上り下りすることは避けましょう。
- でこぼこ道を長距離歩くことは避けましょう。
- 体を冷やさないように、保温に注意しましょう。
- 積極的に杖を使いましょう。
- 脚長差のある人は医師に相談して、補高した靴や室内履きを履きましょう。
更に・・・
- 骨粗鬆症にならないために、食事内容に気を付けて、運動日光浴等を心がけましょう。50歳代後半になったら、骨粗鬆症の検査を受けることをお勧めします。
- 全身の健康状態に関心をもち、他の病気で寝込むことのないように気をつけましょう。寝込むことは脚の筋力低下につながります。
- 股関節症は進行性の病気です。症状が軽い人でも職業選択や住まい選びの時には、将来の変化を予想して計画を立てることをお勧めします。
- 症状が軽いうちに運転免許を取得しておくと、いざという時に役に立ちます。
(以上は、のぞみ会ハンドブックを参照しました。)